馬鹿は馬鹿
当時まだアルバイト雑誌が電話帳の半分くらいの厚さがあり、簡単に金は手に入った。
フリーターなんて言葉がとうじょうしたのも多分この頃だ。
大検の予備校には色んな生徒がいた。不登校児、自ら高校に見切りをつけて大学を目指す者、親が無理矢理、高校の代わりに、と通わさせらてる者。事情はそれぞれ、年齢は下は16から上は20過ぎと様々だった。
女の子達の大半はどこか派手で大人びていて、僕を内心ドキドキさせた。高校には居なかったタイプの集団だった。
僕がどこのグループに居たか。
簡単だった。
入学早々見た目で決まってしまった。意識はしていなかったけど、僕の格好は渋谷の街によく馴染んだ。
朝は不似合いで日が落ちると共に街の色に映える様に目立つ。
頭の良い不良。
チームの成り立ちは有名私立校の遊び仲間だったのにいつの間にか拡大センター街のアイコンになったけれど、僕は取り敢えず見た目だけは、立派に年季の入ったチーマーだった。顔、体格、身長、全てがプラスに働いた。
社会的価値においては意味がないのに10代においては、存在を示す有効なアイテムだった。
でも僕は特に頭の良い学校の出でもなくて、周りにいた慶応の幼稚舎出身の奴らとは違った。
馬鹿は馬鹿。
ただ街にいるだけの僕は、身に付けるブランドなんて何もなかった。
高校中退。酷くバツの悪い身分だけが僕の全てだった。